サメの通る道・・・小笠原より・・・/川波静香著
小笠原の光と影。野性的な島、クジラやサメの泳ぐ海・・。この島から教えられた「本当に大切なもの」とは何か。島に対する愛情を写真、エッセイ、短歌で綴る珠玉の作品集。
<「夜釣り」より>
その時まるで人間の言葉が聞こえたかのように、プカリと巨大なサメが浮かび上がった。
潮位がた高かったため、私たちの立っていたところは海面とほんの数センチしか
離れていなかった。(中略)サメは逃げるどころか、静止したまま、ますますピリピリ
興奮してしまった。見ていた私は、心臓が凍りつくほど怖かった。
(毎晩毎晩、釣りというものに我々がいかに迷惑しているか)
サメの怒りの声が聞こえてくるようであった。